画期的な消費者向け製品の開拓と実用化
Powerset(現在はマイクロソフトの1事業部)

 

背景

オンラインで検索を行うことは、今では人々の日常生活に不可欠になりました。ところが、検索ユーザインターフェースは、最も初期の情報検索システム以来、ほとんど変わっていません。主流となるアプローチは、キーワードと演算子を個々に検索エンジンのインターフェースに入力し、それから結果として得られるリストを眼で追って、関連情報を拾い出すというものです。消費者向け検索エンジンの新興企業であるPowersetの創設者達は、ウェブ検索にはもっと良い方法があるはずだと強く信じていました。中でも共同創設者でありCEO(最高経営責任者)を務めるBarney Pell氏は、次のような見方をしていました。「我々は言語を中心とする偉大な人知に恵まれている。それなのに、コンピュータと対話するために、なぜ自分達の知性を断片的な片言の言語に変換しなければならないのだろうか。」このギャップを埋めるため、Powersetの創設者達は、自然言語処理技術に基づく消費者向けの検索エンジンを開発することを決断しました。それにより、コンピュータの専門用語を無理矢理使用させられるのではなく、通常の言語表現を使って、人がコンピュータともっと自然に対話できるようにしようとしたのです。

ソリューション

コンピュータの処理能力や記憶容量、検索対象となる情報が増大したことから、自然言語検索システムの商品化の機が熟したことを、Powersetは確信しました。それでもこの構想を大規模に実現するためには、複雑な技術をいくつか組み合わせシームレスに融合することが要求されます。有望なビジネスモデルの実現に必要な要件を洗い出し、様々な方法を評価した結果、すでに実用化されていて、実績があり、拡張性にも優れている唯一のものとして、PowersetはPARCの自然言語技術プラットフォームを選定しました。強力な知的財産基盤に立脚した、PARCの自然言語処理の実績は、自然言語処理分野における30年間の理論的、計算的、技術的な進歩を活用しています。すでにScanSoft(Nuance)、Microlytics、Inxightといった他の企業でも、それぞれPARCの自然言語処理製品ポートフォリオの一部を利用して、成功を収める事業を展開してきました。商品化された製品群には、スペルチェックや音声認識といったパッケージ製品から、言語要約技術やビジネスインテリジェンス(BI)ソリューションまで、多岐にわたっています。最も重要なことは、PARCの自然言語処理に対する基本的アプローチにより、コンピュータが意味をよりよく理解できるように、広範で深い処理および検索を行えるようになったことです。PARCのシステムは、一つの意味を表す多くの表現方法を正規化することにより、効率や正確性を損なうことなく、同義語の符号化、品詞の判定、エンティティの確認、エンティティ間の相関関係の把握を可能にしました。

過程

「PARCと連携パートナーシップを結んで商品化を行ったことは、企業としてのPowersetにとって重要なマイルストーンでした。… Powersetには、独特な革新的自然言語技術、世界一流の研究所とのパートナーシップ、そして検索業界内外で活用できる競争力があったのです。」Powerset共同創設者 Steve Newcomb氏

相互に有益なパートナーシップとライセンス供与の契約交渉をした後、PowersetとPARCは契約を結びました。その契約には、使用料、特許権使用料、および新会社での株主所有権と引き替えに、技術ライセンスの供与、特許ライセンスの供与、および長期的な連携が盛り込まれていました。Powersetのベンチャーキャピタル誘致を支援するために、PARCの多方面にわたる自然言語チームは、デモ用意味検索の初期システムを迅速に設計して実装しました。それは、既存の技術と、インデックス作成および検索のための斬新な技法を含む新しい技術とを統合したものでした。PARCのチームはPowersetのインターフェース設計者達と密接に協力して、ユーザに親しみやすいデモンストレーションを行えるよう、システムを修正しました。その間に、Powersetは、PARCのリサーチフェローでもあるRon Kaplan氏を自社のCTO(最高技術責任者)/CSO(最高科学責任者)として迎え、事業の拡大をはかりました。

結果

人が入力する検索クエリの背後にある意味を抽出することにより、Powersetの革新的な自然言語検索エンジンは消費者の検索体験をあらゆる面で改善することができました。その範囲は、精度と検索率から、使いやすさ、提示形式、対話方法にまで及びます。たとえば、人が入力した検索クエリの背後にある意図と検索対象となる情報の両方をコンピュータが理解できるため、検索結果の関連性と正確性が高くなります。

PARCの技術を差別化の中心に据えて、Powersetは24か月以内に下記のことを実現しました。

  • シリーズAの資金および投資家の資金を1250万ドル調達
  • 世界一流の60人からなるチームを採用
  • 大規模な意味検索のプラットフォームとインターフェースを設計
  • ユーザが試験的に製品を使用してフィードバックを提供できる、デモ用のシステムをPowerlabsのマイクロサイト上にリリース
  • 消費者向けの検索エンジン製品を公開、最初はWikipedia用

ベータ版の公開直後に、マイクロソフトがPowersetの買収を発表しました。マイクロソフトの検索担当シニア・バイスプレジデントは次のように述べています。「Powersetが有する自然言語技術は、当社のMicrosoft Researchにおける他の自然言語処理技術をうまく補完してくれます。…Powersetのおかげで、Live Searchに有能な技術者と計算言語学者が参加することになりました。…このチームは、他の検索エンジンでの経験やPARC(元はXerox PARC)のような研究所の経験など、広範囲にわたった経験を持つ素晴らしいチームです。」

 

「今こそ、こういったものを解析して、(ウェブページのコンテンツの)実際の構造を理解する時です。そんなことが果たしてできるでしょうか。2年前だったら、私はできないと言ったでしょう。でもそれは、当時、PARCの自然言語技術を見たこともなかったし、これほど豊富な資金があり、しかも一致団結した取り組みが進められていることを知らなかったからです。」Powersetの共同創設者で最高経営責任者 Barney Pell氏

 

この事例をダウンロードする

 

クライアントプロファイル

Powerset(現在はマイクロソフトの1事業部)

本社:以前はサンフランシスコ、現在はマイクロソフト(ワシントン州のレッドモンド市)の1事業部

売上高:現在はマイクロソフト(580億ドル)の1事業部

従業員数:以前は65人、現在はマイクロソフト(88,000人以上)の1事業部