低コストな新しいエレクトロニクスを高価値なアプリケーションに応用
米国防総省国防高等研究事業局(DARPA)

 

背景

兵士や緊急要員が長期間にわたって戦場で爆風にさらされると、脳に損傷が出てくる可能性があります。こうした外傷性脳損傷を防ぐため、米国防総省国防高等研究事業局(Defense Advanced Research Projects Agency 、略:DARPA)は、爆風による影響が有害なしきい値に達する前に、そのレベルを監視・記録できる早期発見技術を開発する必要がありました。具体的には、(1) メンテナンスを必要とせず(つまり、増員する必要がなく)、最低一週間は戦場で使えるほど頑丈で、しかも(2) 医療記録用にデータを分析・保存した後で捨ててもかまわないほど低コストな爆風線量計を必要としていました。この時点では、DARPAのニーズを満たすことのできる製品は存在していませんでした。

PARCのソリューション

PARCの科学者は、戦場での爆発に関連する様々なデータを感知し、記録して読み取ることができるテープ状のプリンテッド・エレクトロニクスを提案しました。このテープは、防護ヘルメットの曲線に合うよう柔軟で軽いパッチでできており、圧力、加速度、音響、光度を記録するために様々な場所に複数のピエゾセンサが搭載されていました。しかも、イベントトリガーブロック、発振回路、増幅回路、シフトレジスタ、不揮発性メモリなど、センサ信号を読み取るのに必要なエレクトロニクスが組み込まれていました。

過程

PARCは、DARPAのプロジェクトにおいて一般的に定められているフィージビリティ(実現可能性)段階までのプロジェクトを、わずか2年足らずで完了しました。このフィージビリティ段階には、いくつかの技術的マイルストーンを達成する、プログラムマネージャーと毎週会議を行う、四半期ごとに進行状況を報告する会議を行う等が含まれていました。PARCの科学者は、コストを1ドルに抑えながら、DARPAのニーズを満たす個々の部品(センサとエレクトロニクス)のすべてを提供しなければなりませんでした。また、完成したセンサの性能は、提示された仕様(テーブル1を参照)の10%以内であることが要求されていました。当時、必要とされる技術が存在しなかったため、PARCは新しい材料を使って新たな薄膜トランジスタ(TFT)を開発しました。このTFTは、消費電力を削減するためP型とN型の両方で形成されており、印刷技術を使って作製された有機エレクトロニクスでした。また、PARCとDARPAが求める性能に関する要件を満たすため、新しい材料を開発したプリンテッド・エレクトロニクスのパートナー各社と緊密に協力しあいました。

成果

PARCの科学者は、印刷技術、基礎材料、デバイス設計、およびデバイステストに関する深い専門知識を活用することで、メモリや制御エレクトロニクス、複数のセンサを搭載したテープ型爆風線量計のための主な部品を完成しました。これらのすべては、DARPAが特定したアプリケーションのニーズを満たすためにカスタマイズされていました。さらに重要なことは、これらの部品の多くは、印刷技術やロール・ツー・ロール方式を使って作製できるため、新たな形状や低コストを可能にします。

結果として作製された部品は、使い捨てが可能というDARPAの要件を満たしただけでなく、極端なレベルのデータも測定することができるしっかりしたものでした。また、センサの性能は、値段の極めて高い市販のセンサに匹敵するものでした(市販のセンサ1,000ドルに対し、PARCのセンサはわずか1ドル未満)。さらには、メモリアレイは、1週間以上データを維持できることが実証されました。

柔軟性と使い捨てを目的として開発されたこのプリンテッド・エレクトロニクスに関する専門知識は、患者の健康状態のモニタリング、パッケージング、構造のモニタリングのほか、柔軟で低コストなセンサが必要な分野におけるデバイスにも応用可能です。

テーブル 1: DARPAのカスタムセンサ仕様
圧力 音響 加速度 光度

5psiから100psiまで

100dBから175dBまで(約500Hzまで測定)

5gから1000gまで 100kluxから400klux までの線形応答
熱の交差感受性を削減する 熱の交差感受性を削減する 高共振周波数設計 最高感度 350nmから500nmまで

 

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クライアントプロファイル

米国防総省国防高等研究事業局(DARPA)

本部:ワシントンD.C.

売上高:該当なし - 政府機関

従業員数:該当なし