ユーザビリティと漸進的なイノベーションを超えて新市場をターゲット
NECディスプレイソリューションズ
エスノグラフィ
 

背景

フォーチュン・グローバル500にランキングされているNECは、ブロードバンド、eコマース、エンタープライズ・ビジネスソリューションなど、ネットワーク社会の中核となる技術を提供しています。同社の重要なビジネスの一つでもあるNECディスプレイソリューションズ(NEC株式会社の子会社)は、デジタルプレゼンテーションやビジュアルディスプレイシステムを主な事業としており、昨年10億ドルを越える収益を上げました。しかし、プロジェクタ業界は成熟市場であり、競合社の数が増え、製品差別化のニーズが高まっているにも関わらず、イノベーションに向けた取り組みは漸進的な改善や部品技術に留まっています。この業界は、新製品のコンセプト、特に新しい市場におけるコンセプトを展開する時期にあると言えます。

インサイト

PARCのエスノグラファーは、様々な状況における職場環境、人、慣習、そして多様な技術の分析に関して豊かな経験を持っており、プロジェクタを普通に使用する際に数多くの問題が起きることをすでに把握していました。こうした問題は、単なるユーザビリティやユーザ体験を超えたものでした。つまり、プロジェクタは、聴衆とプレゼンタとの間の社会的な関係を変えてしまったのです。

プロジェクタは、使用される状況や背景には不適切な設計となっています。さらには、仕事場でプロジェクタを使う際の習慣は、異なる状況、特に学校の教室で使用する際には当てはまりませんでした。そこでNECディスプレイソリューションズは、この急成長する市場に参入したいと考えていました。

過程と方法

PARCのエスノグラファーは、短期間の試験的なニーズとオポチュニティ・ディスカバリを行うことにより、職場で使われているプロジェクタに伴う多くの問題をすでに把握していました。プロジェクタは、どこにでもある一つの機能しか持たない装置です。ところが、いったい何人のプレゼンタがプロジェクタの設定をいじったり、誤動作を修復しようとして発表を中断したり、離れた場所にあるプロジェクタを使うために物を動かさなければならなかったり、また自分のノートパソコンの画面が投影されてしまい聴衆に謝罪しなければならなかったといった経験をしたでしょうか。

プロジェクタを学校の教室で使用する場合には、新たな問題がありました。学校でインタビューを交えたエスノグラフィの観察を行った結果、PARCの社会科学者は、教室におけるプロジェクタの使い方には重要な違いがあることに気づきました。これらの発見により、重要なデザイン部分や高度な機能から、トレーニングや市場細分化にいたるまで、この市場においてプロジェクタの差別化を図るための新たなビジネスチャンスが見いだされました。

PARCのエスノグラファーは、一連の共同開発ワークショップの一環として、上記の発見を簡潔にまとめたビデオをNECディスプレイソリューションズの関係者に見てもらい、「なるほど」と思う瞬間を理解してもらったうえで、仕事場と学校の教室におけるプロジェクタの使い方の違いを比較してもらいました。ワークショップには、分析結果から設計原理、機能、そして新製品のコンセプトを引き出すことのできる、光学、コンピュータビジョン、ディスプレイの専門家を含むPARCの技術専門家も出席しました。

 

「PARCのアプローチのおかげで、私たちが持っていなかった、また他からも得られなかったであろうインサイトと戦略的なイノベーションを起こす力を得ることができました。」

プロジェクタ事業ユニット 商品企画グループ グループマネージャー 小里 裕章氏

 

成果

プロジェクタとは、社会的観点から見ると、問題を引き起こし、それがさらなる問題を引き起こすといった装置とも言えます。エスノグラフィを使ってプロジェクタがどのように使用されているかを総体的に理解することで、PARCのエスノグラファーは以下の成果をもたらしました。

  • カスタマーのニーズを満たす新しい手段をNECディスプレイソリューションズに認識してもらう。
  • 見逃していたビジネスチャンスの獲得に向けた新しい製品コンセプトを提供する。
  • この急成長市場において、さらなる細分化が可能な機会を見いだす。
  • 現場とユーザの視点を取り入れた形でイノベーションをもたらすといった新しいアプローチを同社に認識してもらう。

 

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クライアントプロファイル

NECディスプレイソリューションズ

NECディスプレイソリューションズ

本社:東京

売上高:10億ドル以上(NECグループ連結:400億ドル以上)

従業員数:500人以上(NECグループ連結:14万人以上)