来場者の体験をより充実したものにするためのシステムを構築
フィロリ・センター
エスノグラフィ
 

背景

歴史保存ナショナル・トラスト(National Trust for Historic Preservation)の所有地であり、カリフォルニア州の歴史的建造物に指定されているフィロリ・センターは、20世紀の建築物で654エーカに及ぶ地所の自然史と文化的伝統を保存・共有することを目的に設立されました。同センターの目的のひとつは公教育であるため、敷地内には来場者が見学をしながら説明を聞ける展示物が置かれた歴史的家屋があります。同センターはPARCと協業することを決め、来場者のための新しい電子ガイドブックの技術を試す場所を提供しました。

インサイト

博物館は公共の場であるため、二人やグループで来場するケースがほとんどですが、来場者用のガイドシステムのほとんどは、来場者同士が交流できるようなデザインにはなっていません。例えば、説明員付きのツアーの場合は通常対話が限られており、ヘッドホン付きの音声ガイドブックを使用する場合は、来場者が個別で行動しがちです。

PARCのエスノグラファーは、同センターへの来場者が音声ガイドブックをどのように使用しているかを観察したところ、来場者は一緒に説明を聞き、体験を共有することを望んでいるという事実に気づきました。そこでPARCはこの観察から得たインサイトを活かし、来場者同士の交流を促すという、来場者が望んでいる機能を音声ガイドブックのシステムに組み入れました。

過程と方法

PARCの社会科学者とコンピュータ科学者は、観察・分析・設計・実地評価・技術革新のプロセスを繰り返し、「Sotto Voce」と呼ばれる音声ガイドブックのプロトタイプの開発と改善に取り組みました。

来場者の対話を分析した結果、PARCのエスノグラファーは、来場者は携帯電子ガイドブックのスピーカーから流れる説明を一緒に聞くことを望んでいることがわかりました。しかし、共有で聞くという設定は、次の理由から特に困難な課題でした。(1)来場者が協力をしながら興味の対象を見つけ、それをガイドブックの中に見つけなければならない、(2)すなわち、お互いが近くにいる必要が出てくるため、自由な行動ができなくなる、また(3)オープンエア型のスピーカーだと、他の来場者の迷惑になるといった理由があるからです。

成果

PARCは、(1)片方の耳を対話に使えるようにヘッドフォンを改良し、(2) 2つのガイドブック装置を連結して同じ音声内容をそれぞれの来場者に同時に送信する「傍受」的機能をSotto Voceシステムに搭載することで、共有体験という来場者の要望に応えました。この改善により、来場者同士が交流できるばかりでなく、来場者は自由に歩き回りながら説明を聞いている展示物を楽しむことができるようになりました。展示物を一人で楽しみたい場合は、傍受モードをオフにすることもできます。

単なるユーザビリティと実用性だけではなく、それ以上のものを目指すことによって、PARCのエスノグラファーは、展示物を訪れることの社会的側面をも改善したのです。こうして生まれたSotto Voceシステムには次の利点があります。

  • 来場者は、音声を聞くタイミングをお互いで調整し合い、同じ場所にいながらもお互いに縛られずに自由に展示スペースを移動できるようになりました。
  • 周辺の社会的状況を意識しながら、他の来場者の共有スペースを妨げることなく、来場者が自分たちの体験をコントロールしながら、しかもお互いの体験をも共有するという願望をバランスよく取り入れることができました。
  • 使用する時間がほんのわずかであっても利用可能な、使いやすい直感的なインターフェースを組み入れました。

来場者からは、同伴者と質の高い交流ができた、歴史的建造物の展示物と歴史についてより充実した会話が可能になった、館内での体験が全体的に向上したなどといった感想が寄せられています。

 

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クライアントプロファイル

フィロリ・センター

本社:カリフォルニア州ウッドサイド市

売上高:データなし:非営利団体

従業員数:データなし